DCプランナー1級試験の過去問・サンプル練習問題(一問一答)

1-1公的年金制度改正

《問》2000(平成12)年公的年金制度改正に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。1)2000(平成12)年改正により,特別支給の老齢厚生年金の定額部分の支給開始年齢は,2001(平成13)年度から2013(平成25)年度にかけて,60歳から65歳へ段階的に1歳ずつ引き上げられ、60歳からは報酬比例部分のみが支給されることとなった。ただし、女性については,開始年齢の引上げが5年遅れで実施されることになっている。

2)2000(平成12)年改正により,国民年金の第1号被保険者期間のみならず,第2号被保険者期間および第3号被保険者期間に係る部分も含めて老齢基礎年金の繰上げが行われるようになり,厚生年金保険の被保険者期間が1年以上ある男性について、老齢基礎年金の全部繰上げ、あるいは一部繰上げ支給制度が創設された。

3)2000(平成12)年改正により,厚生年金(報酬比例部分)の5%引下げが行われた。しかし、経過措置を講じ従前の年金額より下がらないように,5%引下げ後の年金額が物価スライドを含めた従前額を下回る場合には,従前の額が保障される。物価スライド付き従前額保障であるため、物価が下降した場合には、年金額が減少しないように自動的に物価スライド率が据え置かれる。

4)2000(平成12)年改正により,2002(平成14)年度から、65歳から69歳まで(70歳になるまで)の在職者は、厚生年金保険の被保険者として保険料の納付を義務付けられるとともに、60歳台後半の在職老齢年金制度が適用されることとなった。ただし、1937(昭和12)年4月1日以前生まれの被保険者は、保険料は負担するが,在職老齢年金制度の適用はない。

解說

直近に行われた年金制度改正をどの程度理解しているかを問うている。

1)は誤り。1994(平成6)年改正の内容である。2000(平成12)年改正は,平成6年改正により創設された部分年金制度(報酬比例部分の老齢厚生年金)の支給開始年齢を徐々に引き上げ、最終的に65歳前の特別支給精度を廃止し,老齢厚生年金を65歳支給とするものである。

2)も誤り。前段の老齢基礎年金の繰上げ支給については,1985(昭和60)年改正で,第2号および第3号被保険者期間についても対象となったので誤りである。後段の全部繰上げ,一部繰上げ制度は1994(平成6)年改正でありこれも誤り。

3)も誤り。自動的に物価スライド率が据え置かれるという文言が誤りになる。たしかに,平成11年,12年と物価は下落しているが,年金額はそのまま据え置かれている。これは両年とも特例法を制定し,物価スライドを適用していないためである。物価スライドとは、物価が下落した場合には,年金額も引き下げることである。特例法がなければ,自動的に年金額は引き下げられている。

小4)は正しい。1937(昭和12)年4月2日以後に生まれた人が65歳以後も在職している場合は,70歳になるまで厚生年金保険の保険料納付義務があり,また在職老齢年金制度の対象となる。

正解4)

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1-2公的年金制度の概要

《問》公的年金制度の概要に関する次の記述のうち,適切なものはどれか。

1)わが国の年金制度は、自営業者等は国民年金,民間のサラリーマンは厚生年金保険、公務員等は共済年金と,各々分立した制度体系をとり,久々の制度から独自に受ける各々の制度に加入することにより,給付も各々の制度から受けるという国民皆年金の仕組みとなっている。

2)公的年金制度における年金の支給事由は,老齢,障害,死亡という3つの場合であるが,共済年金制度では,老齢に代わり退職が支給事由になっており,昭和16年4月2日以後に生まれた公務員で組合員期間20年以上の人に対しても,勧奨等により60歳前に退職した場合は,退職した翌月に退職共済年金の受給権が発生する。

3) わが国の公的年金制度は,世代間扶養の考え方を基本においた社会保険方式をとっている。社会保険方式とは、国民一人ひとりが保険料を納めるという自助努力を果たしながら、たがいに支え合う仕組みのため、保険料を納付したことのない人は、老齢福祉年金を除き年金給付を受けることは一切ない。

4)公的年金の財源は、保険料および積立金の運用収入を基本としているが、基礎年金の給付に必要な費用の3分の1は,国庫で負担している。平成12年改正で、国庫負担について平成16年までの間に安定した財源を確保し、3分の1から2分の1へ引上げを図るものと規定された。

1)は誤り。昭和60年改正により、従前の分立した年金制度体系から,全国民共通に給付される基礎年金が創設された。厚生年金保険等の被用者年金は、礎年金給付の上乗せの2階部分として報酬比例年金を給付するという制度へ変更された。

2)も誤り。共済年金の支給開始年齢については、現在では厚生年金とほぼ同様の取扱いになっており、60歳前に支給される特例制度は原則として過去のものとなっている。

(3)も誤り。20歳前の障害の場合、20歳から障害基礎年金が支給される。また,一定の合算対象期間があれば、配偶者が被用者年金制度の受給権者の場合,振替加算が支給される等,保険料を納付しなかった場合でも年金給付を受けられる例外がある。4)は記述のとおり正しい。

正解4)

 

1-3国民年金の仕組み

《問》国民年金の仕組みに関するア)~エ)の記述のうち、誤っているものはいくつあるか。

ア)公的年金制度においては,1997(平成9)年1月に基礎年金番号 制が導入されたが,20歳前に被用者年金制度に加入した人に対しては,20歳未満であっても基礎年金番号が付番された国民年金手帳が発行される。

イ)学生本人の所得が一定額以下の場合,20歳以上の学生は在学期間中に保険料納付を要しないとする学生納付特例制度の適用を受けられる。その適用を受けている期間中に障害等級に該当する障害の状態となったときには、一定の条件下で障害基礎年金が満額保障され る。ただし、卒業後10年以内に保険料を追納しないと障害基礎年金は支給停止になる。

ウ)国民年金の付加年金に加入している場合,確定拠出年金には加入できない。

ウ)国民年金の第1号被保険者として保険料納付済期間が20年,厚生 年金保険の被保険者期間が5年の加入期間のある夫(57歳)が死亡した場合,58歳の寡婦(婚姻期間30年)は60歳になっても寡婦年金を受給できない。

1)1つ2)2つ3)3つ4)すべて誤り

解說

ア)は正しい。被用者年金制度に加入した時点で,20歳未満であっても基礎年金番号が付番された国民年金手帳が発行されることになる(国民年金法施行規則(厚生省令第58号))。

イ)は誤り。障害等級に該当する障害の状態にあれば,保険料を追納しないからといって支給停止になることはない(国民年金法第90条等)。

ウ)も誤り。付加年金に加入していても,確定拠出年金には加入可能である (確定拠出年金法第62条)。

エ)は正しい。夫が国民年金の第1号被保険者として保険料納付済期間が25 年以上ないと妻は寡婦年金を受給できない(国民年金法第49条)。

正解2)

 

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1-4適格退職年金の適格要件

《問》適格退職年金の適格要件に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1)契約を締結した事業主である法人の役員(使用人兼務役目は除く)は、加入員から必ず除外しなければならない。

2)掛金額は、適正な年金数理に基づいて算出しなければならない。

3) 契約を解約した場合の要留保額は、契約者である事業主には原則として返還されない。 4) 計算基礎率の一つである予定利率については,その上限が定められている。

首出しなければならない。 当である事業主には原則とし

解說

既存の適格退職年金制度を理解するには,適格要件(法人税法施行令旧館159条(現附則第16条関連))の習熟が必須である。

1)は正しい。3号要件(事業主の除外)に関する記述である。適格退職年金の加入者となりうるのは,その事業主に雇用されている使用人のみに限られ、「事業主である個人もしくはこれと生計を一にする親族」または「事業主である法人の役員(使用人としての職務を有する役員を除く)」を含めてはならないとされている。なお,親族とは6親等内の血族および3親等内の姻族をいう。

2)も正しい。4号要件に関する記述である。掛金額は、適正な年金数理に基づき合理的に算定されているものとされており,(社)日本アクチュアリー会の正会員が適正な年金数理に基づいて計算したものであれば容認しうるものとされている。

3)も正しい。9号要件に関する記述である。事業主が支払った掛金額は損金 算入されており,要留保額はどのような理由があっても事業主に返還できない。ただし,例外的に,イ)厚生年金基金に移行する場合,口)合併等により格退職年金契約に払い込む場合,ハ)農業共同組合等の合併等により特定退職金共済契約に移行する場合、二引受割合の変更があった場合,

要留保額の返還を行うが、いずれの場合にも返還を受けた事業主は,厚生年金基金,他の適格退職年金契約、他の特定退職金共済契約引受割合の増加した受託機関に過去勤務債務等の掛金として直ちに払い込まねばならない(ロ,ハ,ニの場合は、実務的には受託機関間で資金決済しており, 事業主には返金していない。

 

4)は誤り。掛金水準を大きく左右する予定利率については,3号の2要件, 4号要件に規定されており,1997(平成9)年4月の法人税法施行令改正により,従前の年5%以上との規定から,毎年変動する基準利率以上となった。すなわち下限が規定されており,その基準利率は10年国債の金利水準を基に決定される。

なお,確定給付企業年金法の成立・施行に伴い,2002(平成14)年4月以降,新規契約は認められない。既存の適格退職年金については,10年間の経過期間を設け, 2012(平成24)年3月末までに他の企業年金制度に移行しなければ実質廃止となる。

正解 (4)

 

1-5厚生年金基金の設立認可要件

《間》厚生年金基金の設立認可要件に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。

1)厚生年金基金の設立の最低人数要件は,単独型の場合,800名である。

2)基本部分の支給乗率は, 1,000分の7.6以上でなければならない。

3) 加算部分の年金支給開始年齢は通常60歳であるが,規約に定めれば60歳到達以前でも支給開始することができる。

4)「職能資格別ポイント×単価」を基準給与として算定するような、いわゆるポイント制の制度は,適格退職年金では認められているが,厚生年金基金では認められていない。

 

解説

既存の厚生年金基金制度を理解するためには,その設立認可要件に関する最低限の理解が必要である。

1)は誤り。単独型厚生年金基金の設立の最低人数要件は,500名である。

2)も誤り。2000(平成12)年3月の厚生年金保険法改正により,代行部分の支給乗率は1,000分の7.5から7.125に減額され,最低1,000分の0.1の上乗せが必要なことは不変のため、基本部分は最低1,000分の7.225以上でなければならないことになった。

3)は正しい。規約に定めれば、60歳以前から支給を開始すること(繰上げ支給)も,60歳以後に支給を延期すること(繰下げ支給)も可能である。

(4)は誤り。厚生年金基金でも適格退職年金同様ポイント制は認められている。適格退職年金では,最大ポイントと最小ポイントが15倍以内という規制があるが,厚生年金基金でも、同一加算適用加入員期間を有する加入員について15倍以内という規制がある。

正解3)

 

1-6確定給付企業年金(I)

《問》確定給付企業年金法に基づく確定給付企業年金に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。

1)厚生年金保険の被保険者であれば,規約に特段の定めがなければ企業の役員も加入者となれる。

2)脱退一時金と老齢給付金の両方の受給要件を満たした者は,どちらかを選択して受給することができる。

3)加入者が一定の障害状態になった場合および加入者が死亡した場合には、事業主等は必ず給付を行わなければならない。

4)加入者の同意があれば、事業主は積立金の額が最低積立基準額を下回ったままでも制度を終了することができる。

解説

確定給付企業年金法に基づく確定給付企業年金の仕組みを問う問題である。確定給付企業年金法の概要は下記のとおり。

(1)制度の枠組み

1企業年金の新たな形態として,規約型(労使合意の年金規約に基づき外部機関で積立)と基金型(厚生年金の代行のない基金)を設ける。

2老齢給付を基本とし、障害給付,遺族給付も行うことができることとする。

3給付や積立などについて必要最低限のルールを定めたうえで,労使合意に基づき、より柔軟な制度設計を可能とする。

4税制上の措置

・拠出時:事業主拠出は損金算入,本人拠出は生命保険料控除の対象

・運用時:特別法人税を課税(ただし,平成14年度末まで凍結)

・給付時:年金の場合は公的年金等控除の対象とし,一時金の場合は退職

所得課税を適用(老齢給付)

(2)受給権保護のための措置

1積立義務:将来にわたって約束した給付が支給できるよう,年金資産の容積立基準を設定する。

2受託者責任の明確化:企業年金の管理・運営に関わる者の責任,行為準則を明確化する。

(3)情報開示:事業主等は,年金規約の内容を従業員に周知し、財務状況等について加入者等への情報開示を行う。

(3)その他の厚生年金基金について、代行を行わない新企業年金への移行を認める。

代行返上の際には、一定の条件の下に現物による返還を認める。

2適格退職年金については、経過措置を講じて,10年以内に企業年金制度等へ円滑に移行できるようにする。

間の2)は、脱退一時金の受給要件の一つに「老齢給付金の受給要件を満たさないこと」がある。両方の受給要件を同時に満たすことはない(確定給付企業年金法第41条)。3)は、障害給付、遺族給付は任意(規約で定める)となっている(同43・47条)、4)については,終了時は不足の一括償却が求められる(同87条)。1)は記述のとおり(同25条)。

正解1)

1-7確定給付企業年金(Ⅱ)

《問〉確定給付企業年金法に基づく確定給付企業年金に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1)積立金の額は、「(継続基準による)責任準備金の額」および「(非継続基準による)最低積立基準額」を下回らない額でなければならない。

2)事業年度末の決算において,積立金の額が厚生労働省令で定める積立上限額を上回る場合,企業(事業主等)は,翌年度の掛金を通常どおり拠出するか,または減額や停止をするか,を選択できる。

3)基金型において、積立金の運用や管理に関する業務を執行する理事がその業務を怠ったと認められた場合,その理事は基金に対して損害賠償責任を負う。

4)確定給付企業年金法は、同法に基づく確定給付企業年金から,確定拠出年金や厚生年金基金への制度変更(移行)を認めている。

解説

確定給付企業年金の仕組みを問う問題である。

2)は,過剰積立時の掛金の減額(または停止)は強制となっている(確定給付企業年金法第64条)。1),3),4)は記述のとおり(同60・70条,同法第12章)。

正解(2)

 

1-8確定給付企業年金(II)

《問》現在、企業年金制度を実施していないA社は,2002年度より新たに確定給付企業年金法に基づく確定給付企業年金を導入する予定である。この場合,A社の確定給付企業年金の制度設計(規約作成)に関する次の記述のうち,認められないものはどれか。

1)老齢給付の支給開始は60歳とし,従業員が一時金で受け取るか,5年間の年金で受け取るか,支給の方法を選択できるようにした。

2)老齢給付の支給は,定年退職の場合のみ行うこととし、加入者期間25年以上を支給要件とした。

3)2年間勤続した者には,退社事由によらず脱退一時金を支給することとした。

4)労使合意のうえ,従業員本人が掛金の一部を負担することとした。

解說

確定給付企業年金の仕組みを問う問題である。

2)は,規約において20年を超える加入期間を支給要件として定めることはできず,少なくとも勤続20年で退社事由によらず老齢給付金の受給資格が発生する(確定給付企業年金法第36条第2項)。

1),3),4)は記述のとおり認められる(同33・38・41・55条)。

正解(2)

 

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1-9企業年金規約

(問)次のア)〜ウ)の記述のうち,確定拠出年金の企業型年金規約,厚生年金基金規約および適格退職年金規約のすべてに共通してあてはる記述はいくつあるか。

ア)規約は,事業主が労働条件の一部をなすものとして設定するものである。

イ)規約の変更(軽微でないもの)には,厚生労働大臣の認可または承認が必要である。

ウ)規約は、事業主への返還資産額の算定方法を定めている。

1)すべてに共通するものはない

2)1つ

3)2つ

4)3つ

解說

ア)は共通しない。厚生年金基金規約は代議員会が決議し厚生労働大臣が認可する。

イ)も共通しない。適格退職年金規約の変更は、国税庁長官に届け出る。

ウ)も共通しない。厚生年金基金規約では、事業主への資産返還を定めていない。

正解1)

 

1-10 退職金前払制度

《問》 退職金前払制度に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。 1) その支払科目が退職金の前払いであることを就業規則上明記したとし 出ても,給与所得課税を回避することはできない。 2) 事業主が退職金前払いを従業員に確約する以上,退職金前払制度は退

職給付債務計算の対象となる。 3) 従業員にとって退職金前払金は年間所得の増加となるため,その税負

担の増加分は必ず企業が負担しなければならない。 4) 退職金前払制度は,企業にとっては単年度の費用負担で清算が済むた め,制度設計上,将来の資金流出を考慮する必要がまったくない。

解說

大企業が導入したことで話題となった退職金前払制度に関する最低限の理解は,企業に対する退職金・年金制度のコンサルティングを行ううえで必要不可欠である。

1)は正しい。現行税法の規定では,いかなる支払科目といえども給与所得課税の対象となる。

2)は誤り。確定拠出年金制度と同様,企業にとっては単年度の費用計上のみで、退職給付債務計算の対象とはならない。

3)も誤り。退職金前払制度への変更は退職金制度の大変革であり,労使合意上の観点からも、その給与所得課税の増加分を企業が負担するケースが多いが,そのことは企業にとって、法律上の義務ではない。

4)も誤り。退職金前払制度は,企業にとっては単年度の費用負担で清算が済むが,その算定方法により将来の資金流出額が急増することも想定されるため,キャッシュフローの将来予測を十分検討しておく必要がある。

正解1)

 

1-11退職給付債務

《問》退職給付債務等に関する以下の文章の空欄1~3に入る語句等の組合せとして,次のうち正しいものはどれか。

退職給付債務は,将来の退職給付見込額のうち,当期までに発生したと認められる部分の現在価値のことであるが,退職給付見込額の上らえ方によりいくつかの概念に分けられる。累積給付債務とは、(1)従業員の過去勤務期間に対する年金給付の現在価値である。

予測給付債務は,累積給付債務に将来の従業員の(2)を加味して計算する。

もう一つの概念として確定給付債務があるが,わが国の退職給付会計に導入されたものは,(3)である。

1)1すでに受給権を有する2脱退率3予測給付債務

2)1すでに受給権を有する2昇給率3累積給付債務

3)1受給権の有無によらずすべての2昇給率3予測給付債務

4)1の受給権の有無によらずすべての2脱退率3確定給付債務

解說

年金財政,年金会計の基本を問う問題である。

確定給付債務(VBO;Vested Benefit Obligation)は,すでに受給権を有する従業員分について当期までに発生した部分の現在価値である。これに受給権未取得者分の現在価値を加えたものが累積給付債務(ABOAccumulated Benefit Obligation)であり,さらにABOに将来の給与水進の上昇を加味したものが予測給付債務(PBO;Projected Benefit Obligation)となる。わが国において,2000年度に始まる会計年度から適用されることになった感職給付会計基準では、予測給付債務が退職給付債務の算定方式として採用されている。

正解3)

 

1-12退職給付会計における割引率

《問》退職給付会計における割引率を引き下げた場合の、退職給付会計への影響に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。

1)退職給付債務・退職給付費用とも,減少する。

2)退職給付債務・退職給付費用とも,増加する。

3)退職給付債務は減少するが,退職給付費用は増加する。

4)退職給付債務は増加するが,退職給付費用は減少する。

解說

割引率の水準は,退職給付債務・退職給付費用を大きく左右する要素である。残存勤務期間が15年の企業の場合,割引率を1%引き下げたとき、退職給付債務は概ね2割弱程度増加する。それに伴い,勤務費用・利息費用とも同程度増加することとなる。

正解2)

 

1-13退職給付会計(I)

《問》退職給付会計に関するア)~エ)の記述のうち,正しいものは、いくつあるか。

ア)退職金前払制度は,事業主が退職金前払いを従業員に確約するもののであり,退職給付債務計算の対象となる。

イ)厚生年金基金のように従業員拠出がある場合には,従業員拠出にかかる給付の見込額を控除した給付に対して退職給付費用を計算する。

ウ)確定拠出年金制度(企業型年金)では,企業の税務上の損金算入額と企業会計上の費用額とが一致する。

工)厚生年金基金において、厚生年金保険本体の変更に伴う制度変更により発生した過去勤務債務は,制度変更のあった年度の費用として一括認識しなければならない。

1)正しいものはない

2)1つ

3)2つ

4)3つ

解說

ア)は誤り。確定拠出年金と同様、企業にとっては単年度の費用計上のみであり、退職給付債務として計上する必要はない。

1)も誤り。従業員拠出にかかる給付を含めた給付に対する退職給付費用を計算してから従業員の拠出額を控除して企業の会計上の費用を決定する。

ウ)は正しい。

エ)は誤り。遅延認識できる。

正解2)

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1-14退職給付会計(Ⅱ)

《問》Y社は2000年1月1日に退職給付会計を採用した。Y社の2001年6月30日現在の退職給付引当金の計算は,下記のとおりである。下記の計算が正しいとした場合,次の記述のうち,誤っているものはどれか。

・退職給付債務300

・適格退職年金積立金▲150

・移行時差額の未認識額▲80

・数理計算上差異の未認識額20

・退職給付引当金、90

※「△」表示は,退職給付債務から退職給付引当金を導く過程での「マイナス」の意。

1)Y社の2000年7月1日現在の移行時差額が100であったとすれば、移行時差額の償却は5年間均等償却である。

2)数理計算上差異の未認識額は,期末退職給付債務が期初に予定したより小さかったためだけにより生じたものである。

3)数理計算上差異の未認識額があるということから、Y社は発生額を一括償却でなく翌期以降にも繰り延べて償却することとしていることがわかる。

4)移行時差額の未認識額を仮に当期に一括償却するとすれば、会計上,さらに80の費用が発生する。

解說

退職給付引当金は、貸借対照表の負債の部に計上される。

「退職給付引当金=退職給付債務一年金資產士未認識過去對於債裔土木認識数理計算上の差異(土未認識会計基準変更の差異(移行時差額)」

1),3),4)は正しい。1)は、会計基準変更時の移行時差額の償却は「15年以 内の均等償却」とされているので,期初が100で期末の未認識額が80であり、5年の均等償却であることがわかる。

2)は誤り。数理計算上の差異は、資産運用が期初予定したものと異なることによっても生じる。

正解2)

 

1-15退職給付会計(II)

《問》X社は2000年7月1日に退職給付会計を採用した。X社の2001年6月30日に終了した会計年度(1年間)の退職給付費用の計算はのとおりであった。この内容に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。

・勤務費用300(単位:百万円)

・利息費用150

・資産の運用利息見込み▲200

・移行時差額の償却▲150

・数理計算上差異の償却▲20

・退職給付費用80

※「▲」表示は、退職給付費用を導く計算における「マイナス」の意。

1)X社の前会計年度末の退職給与引当金の額は、退職給付債務より少額であった。

2)資産の運用利息見込みが,利息費用より大きくなることはありえないので,この計算は誤りである。

3)X社が厚生年金基金に加入しているとすれば,従業員拠出額見込みが,勤務費用から控除されていなければならない。

4)退職給付会計の適用初年度から数理計算上差異の償却があるのはおかしい。したがって,上記の計算は誤りである。

解說

※1)は誤り。前会計年度末の退職給与引当金の額は債務より大きい(移行時差額が負)。

2)は誤り。資産の運用利息見込みが利息費用より大きくなることはありうる。

3)は正しい。厚生年金基金では、従業員拠出があることはわかっている。

4)は誤り。数理計算上の差異は発生当年度から償却することができる。米国基準では発生翌年度から償却することに注意する必要がある。

正解3)

 

1-16 エリサ法

わが国の確定給付企業年金法と米国のエリサ法(ERISA;従業員退職所得保障法)を比較した次の記述のうち,正しいものはどれか。

1)エリサ法,確定給付企業年金法は,どちらも確定給付型の企業年金制度だけを対象とした法律であり,確定拠出型の企業年金に関する規定は別に定める方法をとっている。

2)エリサ法の支払保証制度は「経済的困窮を理由とする企業年金制度の終了」を支払事由としているのに対し,確定給付企業年金法の支払保証制度は「企業が所属する業界の業績悪化」や「年金財政の極端な悪化」についても支払事由としている。

3)エリサ法では,いかなる場合でも剥奪することのできない権利として企業年金の受給権付与を義務付けているが,確定給付企業年金法では,日本の退職金制度の性格に照らして受給権付与の強制化は見送られ,年金資産の積立基準の強化等により受給権保護が図られている。 4)エリサ法では、事業主だけでなく資産運用機関や投資マネージャーなど広範な制度関係者が受託者責任を負うのに対し、確定給付企業年金法の受託者責任は,事業主および基金の理事だけに課せられている。

解說

日米の企業年金制度の違いを問う問題である。

1)は、エリサ法は企業年金すべてを規定する法律である。2)は,確定給付企業年金への支払保証制度導入は見送られている。4)は確定給付企業年金の受託者責任は資産運用機関にも及ぶ。

正解3)

 

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1-17企業年金改革

《問》企業年金・退職金制度改革の方針に関連するア)~エ)の記述にいて,その対応の適否の組合せとして,次のうち正しいものはどれか

ア)現在,適格退職年金を導入しているA社は,2002年度に確定給付企業年金法が施行されても,次回財政再計算にあたる2005年度までは適格退職年金を現行のまま継続することを決めた。

イ)現在,企業年金制度を実施していないB社は,2002年度に,まずは財政検証ルールなどが比較的緩やかな適格退職年金制度を導入し,5年後に規約型の確定給付企業年金に移行することを検討している。

ウ)現在,厚生年金基金を単独設立で実施しているC社は、タイミングをみて代行部分を国に返上し、残った部分を規約型の確定給付企 業年金に移行することを考えている。

エ)現在,厚生年金基金を単独設立で実施しているD社は,確定給付企業年金法が施行される2002年度以降も厚生年金基金を継続し,上乗せで企業型の確定拠出年金を導入することを検討している。

参照:公式テキスト(書籍/PDF/無料等)

1)イ)以外は制度上認められる(制度上問題ない)。

2イ)とウ)以外は制度上認められる(制度上問題ない)。

3)ア)とウ)以外は制度上認められる(制度上問題ない)。

4)制度上認められる(制度上問題ない)ものは一つもない。

LURE

解說

「企業年金改革全般に関する理解を問う問題である。

イ)は、2002年度以降適格退職年金の新設はできないア),ウ),エ)については制度上認められる移行(施策)である。

正解1)

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