現在形の正しい意味とは? 【TOEICで学ぶ基礎英文法(13)】
現在形が使用できるパターンは? 意外と知らない現在形のルール
動詞の基本形といえば現在形だ。現在形と聞くと「今している行為」を表すように思えるが、それは大きな間違いである。中学校で最初の方に習う現在形だが、正しく理解していない人が多いように思えます。そこで、現在形の正しい使い方を確認しましょう。
現在形は不変的な事象を表現できる
今回は動詞の基本である現在形について教えていきます。動詞の現在形は文法でも初歩段階で習うため、分かっていて当たり前と思われがちですが、意外と適切に使われていないケースを目にします。
例えば、突然外国の方から「レストランはどちらにございますか」とお問い合わせいただき、私も今から向かう途中なんですよね、というような形で返事をするとします。皆さんならどのように答えますか?
良くある答えとしては「I go to the restaurant, too!」があります。
しかしながら、この形では文法的に誤っております。現在形の「現在」とは、文字通り「今」を指します。したがって、「今」とは0秒で終わってしまう時間のことです。極端な例を挙げると、現在形が「今」を表す場合、例えば「今、私もレストランに行く」という言葉を発している間に、その時間は過ぎ去ってしまいます。しかしながら、現実的には、そのようなことは不可能に近いです。では、現在形はどのような場面で用いられるのでしょうか?
たとえば、「彼は背が高い」という表現を考えてみましょう。これを英語で表現すると、「He is tall」というシンプルな現在形の文になります。なぜここでは現在形が使われるのでしょうか? それは、「彼は背が高い」という事実が恒久的に変わらないものであるからです。つまり、いつどのような場合でも、「彼は背が高い」ということ実態が変わらないので、現在形が使用できるということです。
ただし、彼の身長が低くなってしまった場合、表現も変わります。彼が背が高かったのに、背が低いと表現するには、「He has been short」となります。
この場合、彼はずっと背が高いわけではなくなってしまったので、現在形に関しては使用ができなくなりました。「彼は背が高かった」という期間が完了し、その時点から現在に至るまで「彼は背が低い」という状態を継続しているので「現在完了形」を使います。
また、「彼は背が高かった」という表現をするときも、生まれてから背が低くなるまでの期間限定で背が高かったので、「He had been tall.」という現在完了形になります。このように現在形の動詞は、今後も不変なことに対して使用することができます。
習慣や一般常識を表現するときも現在形を使える
次の文章を、同じ意味で違う言葉の言い回しの日本語で言い直してください。
次に、「彼女は毎日歯を磨いている」という習慣を表現したい場合も、「She brushes her teeth every day」というように動詞の原形を使用することができます。なぜなら、毎日歯を磨くという「習慣」は今後もずっと変わらず続くからです。
今の時点で「彼女は毎日歯を磨く」と言っても、未来の時点で「彼女は毎日歯を磨く」と言っても、現在の時点で彼は毎日歯を磨いているのです。そのため、根底的には不変の原理がここでも働くので、「習慣」を表す場合には現在形を利用できるのです。
続いて、「Winter is cold(冬は寒い)」のような一般常識にも現在形を使用できます。(寒くない冬はありますが)冬が寒いというのは不変の常識です。つまり、冬が寒いということは一般的な常識であり、いつの時点で話しても冬は寒いままなのです。
それでは、現在形の使い方を理解してきたところで、問題を解いてみましょう。TOEIC®の文法問題では、現在形を解答する問題は比較的多くは見かけませんが、選択肢に現在形を混ぜて誤答を誘う問題があります。以下の問題をご覧ください。
問題:Ms. Yamada will discuss about the accident she ______ in front of our office yesterday.
(A)sees
(B)saw
(C)will see
(D)see
この問題は動詞の時制を問う問題です。問題を解く前の条件として見ておきたいことは、問題文における関係代名詞の省略の有無です。関係代名詞を入れて問題文を書き直すと「Ms. Yamada will discuss about the accident [that] she ______ in front of our office yesterday」となります。つまり、that以下の文は、問題文に挿入された「節」で独立した文と考えて良いのです。
ここで文を2つに分けて見てみましょう。
「Ms. Yamada will discuss about the accident」と「She ______ [the accident] in front of our office yesterday」と分割できます。
答えは過去形の(B)sawです。
このようにすればよく分かりますね。彼女は事故を「yesterday(昨日)」見ました。
この例では、主節に未来形が使われているため、従属節には過去を表す現在形が使われることがあります。しかし、現在形は「今」を表すため、過去の出来事を表現するときには使われません。現在形を使うべきではないということを知っていれば、この問題は簡単に解けます。
いかがでしたでしょうか? 現在形はわかっているようで、実はわかっていない状態になっていると、今回挙げたような問題で誤答をしかねません。TOEIC®や英検の文法問題でも似たような問題が出るかもしれませんので、現在形の使える場面を理解しておきましょう。